あかねいろ

『それが産まれた時からあたし達の距離だったの。たった3秒で渡れる道幅は、数学的な長さじゃなくって、永遠に遠い距離だったんだ…』


少しづつ南深から想いが溢れてくる。


『ずっと…誰かに言いたかったけど…、言えなくて…』



ゆっくりゆっくり…

産まれてから今日までの恭次との事を話しだした。



『あたし…ずっと恭次の事、好きだった。でも、恭次あんなだし、素直になれなくて…ずっと昔から…』


夕陽は切なくて、涙が出てきてしまう。


『夏祭り…いつも恭次と来てたんだ…。なんだかんだ、それだけはずっと…。でも最近…ちょっと気不味くって…今年は行かないって思って…ひぃちゃんの事巻き込んじゃった…ゴメン…』


大斗は黙ってグズグズの夕陽の頭をポンッとする。


『みなみー…、あたし先輩に遊ばれちゃったんだぁ。自業自得。さっきは言えなくてゴメン。あたしも言えないことあるよ…みんなそうだよ…』


南深は凄いよ…ちゃんと気持ち…話せるもん…


『上手く行くことばかりじゃないけど…辛い事ばっかだけど…でも…頑張ろうね…』

南深もポロポロ涙を流す。


~♪~♪~♪~


地下の部屋、強い電波が南深の携帯を鳴らす。

彼女は画面を見て固まっている。


―着信。恭次―


『出なよ』

大斗の言葉に、我に還って南深は電話にでた。


――――――――


しばらくして、恭次がBarにやってきた。


『帰るぞ!!大斗こないだゴメン。ひぃちゃんバイバイ!』


そう言って南深を連れて行ってしまった。

あまりにも一瞬すぎた。

恭次は本当にそれしか言わなかった。

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