ありがと。

結局私が家に
帰りついたのは
9:00近くになっていた。

「今日は
ありがとね」

成夜は私を家まで
送ってくれた。


「…うん」




まただ。

成夜のこの

寂しそうな目



でも聞いたら

成夜が

どこか遠くに
行ってしまいそうで


私はなんて

卑怯なんだろう。


怖いばっかりに

何も聞けなかった。


「じゃあ…
ばいばい」

「…待って」


成夜の顔が
近付いてきて

前髪が
おでこに触れる。

―チュッ―


成夜は笑うと
手を振って
帰っていった。


私は家に帰り
お風呂に
入ろうとした時に
ある事に気付いた。



成夜のマフラー


持って帰って

来ちゃった…。



「寒い」と言う私に

成夜は
自分が巻いていた
マフラーを
貸してくれた。

私はそのまま
忘れていた。



まあ いっか

いつでも
返せるしね♪



私はそう思い

その日は

早々と寝てしまった。



この日の
このマフラーが

無ければ

私達は


きっと


あの日に話す事は



出来なかっただろう。


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