LUCE
「俺んちこっち」

と、林の奥に連れて行かれる。
あたしたちの住んでいる地域は、山に囲まれたとこだから、
少し大通りを外れるとすぐに林などが現れる。



林の中を5分程歩いたところに、そのお屋敷はあった。


真っ白な外壁に、こげ茶の窓枠。
真っ白な壁は光を受けてまぶしく輝いている。
中世ヨーロッパを思わせるような外観に、あたしは一瞬日本にいることを忘れそうになった。

「ここだよ」

そう優斗くんが言って、あたしは我に帰った。

「ここ?すごいとこだね」

「そう?昔からいるからそうも感じないんだよね」

そう言って少しだけ笑った。

改めて優斗くんの家を見てみる。
それにしてもすごい家だ。あの、お嬢様の春音の家でさえ、
もう少し小さいのに。(まあ、聖紀くんの家は、これよりもっと大きいんだろうけど)
一体優斗くんて何者なんだろう…?
そんなことを思っていると、優斗くんが、

「はやく入りなよ。閉めちゃうよ?」

と言ったので、小走りで中へ入った。


「ただいま~」「お邪魔します」

しばらくすると小さい男の子が出てきて、

「ゆうにぃ~おかえり」

とまだはっきりしない口調で言う。
続いてあたしの方を見て、

「おねえちゃんだあれ?ゆうにぃのおともだち?」

と不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
すると奥から、

「あら~来夢ちゃん。いらっしゃい。優斗もお帰り」

と、エプロンを付けた美桜さんがやって来た。
やわらかく微笑む美桜さんは、どこからどう見ても“いいお母さん”だ。

「こんにちは」

「将斗と、聖紀と、その彼女たちと遊んでたんだけど、
別行動しようって話になって、行くところもないし、連れてきちゃった」

「そうなの。来夢ちゃん、ゆっくりしてってね。
優斗、部屋行く?行くならあとで何か持っていくけど」

「うん。そうしようかな。俺の部屋でいい?」

「いいよ」

「じゃあ、行こうか。和祈(カズキ)もくる?」

和祈と呼ばれた弟であろうその子は、満面の笑みで

「いくー」

と優斗くんに飛びついた。
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