ＬＵＣＥ

美桜さんが帰ってきて、夕食に呼ばれる。
メニューは、ハンバーグ。これは和祈くんの大好物らしい。

思えば、ここ数ヶ月あたしはお母さんの手料理というものを食べていない。
母は仕事が忙しく、毎日のように会社で残業をしてくるため、帰りはいつも9時を回っている。
その上、父は今アメリカに単身赴任中なので、あと1年は家に帰ってこない。
だから、いつも家の仕事のほとんどをあたしと妹の愛夢とで分担してやっている。

料理を作るのはあたしの役目で、こうしてあたしのいないとき愛夢は祖父の家で預かってもらっているのだ。

「どう？おいしい？」

「はい。すごくおいしいです」

美桜さんの料理はどれも、文句なしにおいしい。
あたしは、こんなにおいしい料理を毎日食べられる優斗くんたちを、少しうらやましく思った。


時刻はもう８時をさしている。そろそろ帰らないと、
家に着くころは９時になってしまう。

「あの、あたしそろそろ帰ります。ごちそうさまでした」

「あ、そう？じゃあ優斗、来夢ちゃん送っててあげて」

「え、あ、平気です。１人で」

「だめよ。女の子が１人歩きなんかしちゃ。
何かあったら来夢ちゃんのお母さんに顔向けできないもの。
絶対送っていきなさいよ、優斗」

「あ、うん」

美桜さんの押しに負け、あたしは優斗くんに送ってもらうことになった。


「お邪魔しました」

「また来てちょうだいね。まってるわ」

「はい。それじゃ」

重たいドアを閉めて優斗くんの家を出る。
本当にすごい家だった。




「優斗くんの家、ほんとすごいね。春音の家より大きいよ」

「そうかな～。でも、小さいころは、よく家で迷った」

と、他愛もない話をしながら送ってもらった。