LUCE
―優斗SIDE―

「なぁ、母さん。あいつのこと知ってたの?」

「来夢ちゃんのこと?
…知ってたわよ。」

「ならなんで…っ」

「どうして来夢ちゃんのこと優斗に言わなかったのかって?
あなたをびっくりさせたくなかったのよ。わかって?
それに、あなたに話したところで、変わることなんて何一つないのよ。
あの子はもう、戻って来ない。それは変えることができないじゃない」

「でも…」

「それに、優斗と来夢ちゃんが、まさか同じクラスになるなんて思わなかったし。
でも、今日は本当にびっくりしたわ。いきなり来夢ちゃん連れてくるんだもの。
優斗がこの家に人を呼ぶなんて、久々だものね。将斗と聖紀も、最近はちっとも来ないのに」

俺が最後に家に人を呼んだのは、どのくらい前のことだろう…。
でも、確かなことはあの事件があってから呼んでいないことだ。
あんなにしょっちゅう遊んでいた将斗や聖紀もまったく呼ばなくなっていた。

俺は、あれから誰にも“自分”を見せていない。
もし見せてしまったら、きっと俺でなくなる。
そう思うと、何も見せられなくなった。

「そうだったかな?まあ、また今度呼ぶよ。
じゃあ、俺、風呂入ってくるから」

「うん、おやすみ」

曖昧に誤魔化してその場を離れる。
これ以上、このことに触れられているのは耐えられなかった。


風呂を出て、自分の部屋に戻り、ベッドに入る。
すぐに襲ってきた緩やかな眠気に、身を任せた。
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