あなたしか居ないっ
「花火きれーだね!」
花火の音で届きにくい声を大きくして言う。
「そーだな!麗衣寒くねえか?」
「大丈夫だよ!」
「………。」
ギュッ
(…えっ?)
希吏に顔を向けると
「俺は寒い。」
と涼しい顔で言う。
希吏の手はとても暖かかった。
"ヴヴヴッ"
「ちょ…悪い…」
花火の音で聞こえづらい。
携帯を取り出し希吏は電話にでた。
希吏に手を離される。
「あ……。」
離れた手がすぐに恋しくなる。
手で"ちょっとごめん"とでも言いたそうな素振りで
人ごみの中に希吏は消えていった────