あなたしか居ないっ
ミキに手を引かれたまま人ごみをすり抜ける。
周りの騒がしい音がどんどん遠のいていき、
あたしの心臓の音だけがどくんどくんと音を立てていた。
時たまこちらを見ては大丈夫?と声をかけるミキ。
それにあたしはただ首をこくんと縦に振るだけだった。
「…………あ…」
「え?」
あたしは聞き逃さなかった。
騒音に紛れる中で聞こえた今にも消えそうな声を。
「………ここにはもうあいつ居ないや。」
申し訳なさそうな顔で笑うミキに、
「うそだ。なんか隠してる?」
「えっ?別に何も?ホントにいなかったよ。」
「行こ?」
そう言って反対方向に手を引くミキ。
「うん…。」
腑に落ちないままみきの見つめていた方を見つめた。
「………………っ!」
(うそ…………。)