だって、女なんだもん… 仕方ないじゃん!
「どうかしましたか?」

いつの間にか、私の顔を覗き込み、心配そうに私を見た。

「あっ…。スイマセン…。大丈夫です」

「なら、いいんだけど。迷惑じゃ…なかったかなって思って…」
私に、自販機から買ったばかりのペットボトルのお茶を渡した。

「ありがとう…」
ペットボトルを受け取った。

「お茶で良かったかな?」

「あっ、はい…」

「名前、聞いても良いかな?」
その主は、自分の分のペットボトルの蓋を開けお茶を一口飲み、私の言葉を待っていた。
しかし、失礼な事を聞いたのでは?と思い直し直ぐ様、主は言った。
「あっ、失礼だよね。人に聞く前に、自分で名乗らないと」

「はぁ…」

「僕、佐々谷圭介。ここの近くで、建設業を経営してるんだ。経営と言っても、小さい会社なんだけど…」

「はぁ…」

「君は?と言っても、ビックリするよね。いきなり来て、素性も分からない男から話し掛けられても…」

「はい…。あっ、いや…」

「いいよ。無理しなくても。僕も、いつもこうやって誰にでも声を掛けてるなんて、思われたくないしね」
佐々谷圭介は、ハハと、笑った。

笑った顔は、人懐っこさを醸し出していた。



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