だって、女なんだもん… 仕方ないじゃん!
圭介は、手際よくワインのコルクを抜き、グラスにワインを注いだ。

白ワインが、グラスに満たされる。


私は、ただただ、そのワインを見つめるだけだった。


「それじゃ、お疲れ」

圭介が、私のグラスに自分のグラスを軽く合わせる。
ガラスとガラスのぶつかる音。
その音は、とても綺麗な音色だった。


淳也といた時にはなかった、音色。

もう、あの頃とは違う。

圭介となら、嫌な思い出のモノも、きっと、イイ思い出に出来る。
変われる。
そう、思った。


「甘くて、飲みやすいね。このワイン…」
ワインを一口飲んで、ビックリした。
白といえば、たいてい辛口を男性は選ぶ。
私は、今まで白ワインが苦手だった。
しかし好きな人が、好きなんだ!と、言われれば断る勇気さえない。
好きになる様に、我慢して飲み続けた。

そうやって、無理をして背伸びをしながら、今まで付き合ってきたのだ。


好きだから…
ただ、それだけの事で自分を押し殺してきたのだ。



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