だって、女なんだもん… 仕方ないじゃん!
「圭介から、生前、恭子さんの事を伺っていますよ」

「えっ…」
私は、驚いた。
圭介が、両親に私の話をしていたなんて、思ってもいなかった。

「離婚してから数十年経つのに、一向に再婚する気配もなくて心配していたんです。でも恭子さん、あなたの話を圭介から聞いて、本当に嬉しかった。圭介を想ってくれる、相手が出来た事に。『近々、恭子を連れて行くから。本当にいい子なんだ』って手放しで喜んだ圭介の声を聞くのは始めてで…」
圭介の母親は、言葉を詰まらせた。


私は泣きながら、圭介の母親に謝った。
何度も何度も、謝った。


「今回の事件は、あなたのセイじゃないのよ、恭子さん。誰も悪くない。ただ、たまたま運が悪かっただけ。でも、圭介も本望じゃなかったかしら…。愛する者を守り抜いたんだから。だから、恭子さん。あなたも圭介の分まで、しっかり生きて下さいね」
圭介の母親は、私の肩を抱いた。


私は涙を流しながら言葉にならずに、ただただ頷くばかりだった。



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