PureLOVE〜キセキの確率〜

<晋也>

確かに、僕は晋也ではなく拓也だ。


兄の、晋也。


彼は…


「おーい、何やってんだ、お前」


リコさんが上下ジャージとゆう格好で浜辺を歩いてくる。


すごいラフな格好…あれはまじで喋らなかったら男だ…


「タクヤくん、アコ、ちゃんと無事手術終わったよ」

!!


「成功しましたか?」


「ん、まあそんな難しい手術でもねーし…今からいろいろ調べることもあるし…」

「調べる?」

「転移っつってな、ガンがどこまで広がってるか調べなくちゃなんねーんだよ」

「あ…」


僕は下唇を噛んだ。


今まで、こんな経験はない。

友人達はまだ、これから先、有り余る人生の行方を希望に満ちた思いで眺める事のできる年齢だ。



「あの、アコさんとリコさんて、おいくつ…なんですか?」


「26、意外と歳だぞ、お前から見たら、おばさんだな」


「いえ…そんな…」


「なぁ、なんで兄ちゃんのふりしてんの?」


「なんで…」


「いや、別に言いたくねーならいいし」


「や、そんな事は…」


僕は頭から離れないあの光景を、振り払いながらなるべく冷静に答えるために身体に力を入れた。


「兄は、兄は、死にました…」


「えっ」



一瞬のうちにしてリコさんの表情が凍り付いたのがわかった。


「すいません」


「いや、あやまることじゃねーだろ、でも若いだろ、シンヤって、blogじゃ大学生だって…」


「はい、でも一年前…事故、バイクで死にました」


「…そうか、わりぃ、言いにくい事聞いちまって…」

「いえ、大丈夫です、もうかなり僕も立ち直りましたから」


「ちょっと歩こうぜ」


リコさんは強引に僕の手を握った。


僕等は、無言で、極寒の浜辺を、ひたすら歩いた。



ただ、そうせずにはいられなかった



。僕等は同じ痛みを、そうして一歩づつ共有した。


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