魔王さま100分の1
「栗?」

初めて聞く。

「ああ、これさ」

言って、店からカゴをもって出てきたのは、たぶんここの女将さん。

カゴの中には、茶色の皮に包まれた木の実が焼きたての香りをまとって並べられていた。

「初めて見ました」
「だろう、最近ここで採れるようになった特産品さ」

「この都市で作っているのですか?」
「ふふ、それ以上は食べてからだよ」

女将は、にっこりと値を告げる。
常識内の金額だったので、シルキスは即買した。

「ただし、支払いはひとつ食べてから」
「しっかりしてるねえ。熱いから気をつけて」

女将は笑顔で栗の一粒をシルキスの手に乗せる。
ほんのりした熱。
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