魔王さま100分の1

「魔王さま、凄いです」

「ふっ、あたりまえだが、もっと褒めていいぞ」

魔王さまは上機嫌。

ただ、ほんのちょっとだけ残念そうに付け加える。

「だが、魔法を発動できる文字や図形は忘れているな。前の私め、抜かりない」

「そうですか……。人間の文字はどうです?」

「うむ、見ていろ」

魔王さまは、魔族文字と全く同じペースで人間の文字を書く。

興味津々で見つめるシルキス。
その顔が、ぽかんとなる。

同時、
書いた魔王さま本人がびっくりして叫ぶ。

「な、なんだこれはっ」

書きあげられたその文字は、えらく丸っこい、ちびちびとした女の子文字だった。

シルキスは、思い切りツボに入って笑い転げた。

「ぶっ、ぶははははははっ」

エルフのリズの字もこんな感じだったが、
遥かその上をいく、

丸さ、ちびさ、可愛さ。

< 198 / 329 >

この作品をシェア

pagetop