魔王さま100分の1
「こっちに貯めてどうする?必要なら、おまえの本宅に置け」
「開拓地の家なら、ここ以上に貯めてますよ。共同の食料庫なので勢いが違います。消費もその分違いますが」
「まったく、人間という生き物は不便だな」
「皆、長く閉ざされる冬が怖いのです」
魔王さまには知識としてしか理解できないが、シルキスにとっては本心からの言葉。
ここ辺境地は、夏前後の食糧生産が豊かな代わりに冬が長く厳しい。
家にこもって暖をとる以外することがなくなる冬は、手近に届く食料の存在が一番の安らぎになるのだ。
「まあ、普段食べている時の魔王さまの幸せみたいなものです」
「分かったことにしてやろう。そのわりに、収穫時に行う人間どもの祭りは豪勢だそうだが?」