魔王さま100分の1

魔王さまが鍋と言えばこれだろう。
好んで膝にのせていたもの。

シルキスは、薬箱の隣になじみの鍋を置いた。

新品の消毒液と塗り薬と包帯、少し考えて縫合用の針と糸を入れておく。

「魔王さまに縫われることがありませんように」

入れた鍋にむかってお祈りする。
魔王さまには、まだ裁縫を教えていない。

ついでに自分も自信がない。

雑巾ならいけるが、自分の身体が雑巾になるのは悲しい。

ほどなく、魔王さまが戻ってきた。

「これを着ろ」

シャツ、パンツ、ズボン、上着、コート、靴下、着替え一式を投げつける。

自分は厚手のコートを羽織ってきていた。
あと、手に水着。

魔王さまは、着替えるシルキスに目をくれず、水着を鍋にぎゅうぎゅう押し込むと、

さらに別の棚からお菓子袋を持ってきて、ざばーっと中身をテーブルにぶちまける。


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