魔王さま100分の1

シルキスと魔王さまの出発を邪魔する者は、庭には誰もいなかった。

数人分、魔王さまへの不意打ちを狙っている気配があったが、

『今、手を出したら死ぬより酷い目にあわせます』と、

気配を送り返したら静かに見送ってくれた。

シルキスは、庭をうろうろしていた馬を引いて門を押す。

門の外で5人ほどの見張役がおろおろしていたが、レンガを速攻で投げつけて役目を終らせる。

「魔王さま、お手を」
「うむ」

シルキスは、魔王さまを胸に抱えて一息で馬に跨る。

荷物は、それぞれの背に袋がひとつずつと、シルキスの腰にさされた魔王殺しが一刀。

「出発です」
「いけっ」

駆け出す馬。
魔王さまが200年以上ぶりに壁の外に出た。

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