魔王さま100分の1

シルキスは、笑顔で言う。

「ごめん、でもいくよ」
「どうして?」

「一番好きな人と遠くに行くから」

娘は、シルキスの腕に抱かれる魔王さまを見た。

金髪と黄色の服。
その両方に所々ついたシルキスの血。

「いやっ、ここにいてっ」

娘の目から涙が落ちる。

「元気でね」

シルキスは、娘に背をむけ牛に跨った。

手綱なしで完璧に扱い、外に駆け出していく。

開拓地の外は荒野。
道なき道を暴れ牛は力強く直進していく。

どんどん遠くなっていく町。
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