魔王さま100分の1


それから三日。

シルキスは、通常の街道は大きく外れるコースを通って進んでいた。

暴れ牛のような気の荒い野生の魔族の生息地を突っ切るコース。

魔王さまがいるから魔族関係には襲われないだろうと考えてのことだが、本当に襲われなかった。

旅人には最高のお守りだ。

あと大ニュース。

最初の晩、シルキスが怪我で苦しむふりをして、魔王さまに膝まくらを要求したらしてくれた。

大怪我、最高。

で、そのシルキスが朝になったら起してくださいと寝たら、朝になる遥か手前でおこされた。

脚がしびれた、二度としないと言われて。

うーん、さすが魔王さま。

で、二日目の晩には、怪我が目に見えて分かるぐらい回復していたシルキス。

ダメもとで怪我に苦しむふりをしたら頭突きされた。

悲しい。

そんな魔王さまは今、涼しい顔でシルキスの腕の中、飴を舐めながら牛に揺られている。


< 305 / 329 >

この作品をシェア

pagetop