魔王さま100分の1
陽がかげってきたころ。
土掘りはだいたい終った。
普通の人間から見れば驚愕の速さ。
軽く見て10人分の仕事が終えてある。
今はそれを褒める人間も、
自慢する相手もいないので、
シルキスは黙って今日の作業を区切る。
自分の汗よりも先に、
クワについた土を丁寧にふきとり、
塔の中に戻って、
このクワの定位置である扉の横に立てかける。
それを呆れた目で見ている魔王さまに、シルキス。
「魔王さま、これをつっかえる時はこことここに通すのです。魔王さまにもできるように低目にしておきました。覚えておいてくださいね」
「それは何度も聞いた。覚えてもいるから、自分の汗をふけ」
シルキスに洗い立ての汗拭きを投げる魔王さま。
自分で洗ってやったことは言わないが、
シルキスには当然分かる。