魔王さま100分の1
おまけ1
シルキスVS牛
シルキスは、走った。
暴れ牛達は、すでにシルキスに気づいている。
全頭やるきだ。
子牛まで、いななきをあげている。
親牛達は、今、スクラムを組んで突っ込んできた。
とりあえず、
「死なない程度の一撃いいい!!」
クワの柄のほうで、真ん中の頭をぶん殴る。
バキッ。
さすが暴れ牛。
荒野を耕し続けた歴戦のクワを、首を振って角で受ける。
だが、
「甘いっ」
飛び上がったシルキスの、鼻先への強烈な踏み付け。
たまらず脚をとめる牛の背を、シルキスは勢いのままゴロゴロと転がった。
身体のあちこちがミシメキ言うのは気にしない。
我慢する。
後ろに落っこちざま、形見だったか秘蔵だったかの包丁を振った。
落ちる尻尾。
神業だ。
出来ると思ってやったのだが、いざ出来ると自分でもびっくりする。
勇者の血って凄いんだなあ。
感心。
で、ひとつ決める。
叫びながら戦うのはやめよう……。
ちょっと舌を噛んだ。
痛い。