魔王さま100分の1
さて、

暴れ牛といえども親子の情。
仲間の絆。

子牛の背に乗ったシルキスには攻撃してこない。

ぐるぐると囲んで威嚇してくるだけ。

勝った。
シルキスは笑む。

このまま順に乗り移っていけばいい。
終ってみれば、たかが牛。

結末はあっけない。

と、

シルキスの前の牛が、前脚を大きく引いた。
珍しい動作。

見れば、

その牛が振り戻す先にあるのは、さっきなくした包丁。

逆転のアイテムが今、敵の手、もとい脚に。

バコーン!!

すごい勢いで蹴りだされた包丁が、シルキスの額に直撃する。

よかった。
ぶつかったのが包丁の刃のほうでなくてよかった。

シルキスは再び地面に落ちながら、
普段の実務ではあまり助けてくれない教会の主に感謝する。

「ああ~~~」

とか言ってるのは、やはり離れたところにいる人達。

またお手玉になっている本人にそんな余裕なし。

やはり反撃のきっかけはアイテム。
向こうが有効に使ったのなら、こっちもそうする。

ちなみに、ノコギリは言うまでもなく既に飛んでった。

あと残っているのは、ノミ、ハンマー、爪きり、ロープ、お守り、石、キスの思い出。

今一番役立ちそうなのが、思い出なのが怖い。

とにかくシルキスは生きる為にホルスターをまさぐった。

出てきたのはお守り。
紙製。

かすむ目で見ると、小吉と書いてあった。

「これお守り違う、おみくじやー」

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