銀色メモリー
セピアフユージョン
 私が涼と初めて会ったのは、中学3年の時だった。

 6時限目の学年集会は体育祭のリハーサルとして、外ですることになっていたのだけれど、その日はあいにくと天候は雨で、体育館へと移動になった。

 もともと開拓された地域に建てられた学校の為に、生徒数はかなり少ない。
 クラスも学年で3クラスだけだったし、顔ぶれは殆ど小学校からの持ち上がりときていた。
 生徒の自主性を育てる・・・と、いう学校の教育方針の元、クラスは6人の班に分かれ、何かするのにも班で相談しての行動となっていた。

 私は何故か班長に選ばれてしまい、クラスでちょうど1人たらなかったので、うちの班は5人という半端な数だったのだ。

 横から、列に並んで座っていた私を担任の先生が呼ぶ。
 列を抜け、私は先生の方へ行った。

「愛田、お前の班に転校生を入れるから、そのつもりで今日は練習してくれな」

 先生は『まだ他の班には秘密だぞ』と言って私にそう告げた。
 3クラスで定員に満たないのはうちのクラスだけだったし、班で1人足りなかったのは私の班だったので、転校生が来るとなれば、うちの班に入るのはごく当然の流れだ。

「いつ来るんですか?」
「来週の月曜日だ。愛田喜べ、男子だぞ」

 別に転校生が男子であろうと私には関係ないし、私的には女の子の方がいいに決まっているのに、何故か先生は男子の方が私が喜ぶと思ったらしい。
 喜んでいるとしたら、やっと自分の班が他の班と同じ人数になったぐらいだ。






 先生の言った通り、転校生は次の月曜日の朝にやって来た。

 とても健康的なチョコレート色の肌と、強い光を放つ瞳が印象的で、私は彼の前に立った時、何故かどきどきした。
 自分の気持がわからないまま、私は自分の班に入ってきた転校生の世話をあれこれと焼いて、彼がすっかりクラスになじんだ頃、私はやっと自分の気持に気付いたのだ。

 彼、下沢 涼は、性格も良く誰からもすぐに好かれたし、私とも気が合い、班が同じな為に何をするのにも一緒で、私は毎日が楽しかった。
 そんな中、何となく、涼も私のことを好きなんじゃないかと思い始めた頃、それは大きな思い違いだと思い知らされたのだ。

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