銀色メモリー
 学校へ行く為に、いつもの時間、制服に着替えている時、携帯が鳴った。
 画面には明の名前。
 何かあったのかな?って思いつつ受信ボタンを押してみれば、電話の向こうから咳をしている音が聞こえた。

「明?」
「ごほっ、み、美弥?」

 明かに風邪を引いてるってわかる、ガラガラな明の声。

「風邪、ひいちゃった?」
「ん、そうみたい。昨日からすごく寒気してたから、もしかしてって思ってたんだけどね。そんなわけだから、ごめん、今日は美弥一人で学校へ行って」
「大丈夫なの?」
「大丈夫、これから病院へも行くし、2、3日寝てれば直るよ」

 時たま、明がせき込んで、会話がなかなか進まない。
 それなのに明は会話を続けようとする。

「もういいから、寝て?」
「今日から一週間、両親がいないんだ」
「一人なの?」
「一人じゃないよ・・・兄貴はいるから」

 私の言葉に、明は言いにくそうに答える。

「・・・学校が終わったらお見舞いに行こうか?」

 やっぱりまだ、涼のことは会話にしにくくて、そんなふうにしか聞くことが出来ない。

「兄貴は部活があるから、遅くにならないと帰って来ないけど、美弥が来て風邪をうつしちゃったら困るから、お見舞いにはこなくていいよ」
「でも・・・」
「僕だって美弥に会いたいしね、一日でも早く風邪を治すから、だから、ね?」

 子供に言い聞かせるように言う明に、私は『わかった』って言うしかなかった。

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