銀色メモリー
ハイパーパニック
 掴まれた腕から熱が伝わり、眩暈が起きる。
 その熱は、ずっと好きだった涼からのもの・・・・・・。

 2年ぶりに会った涼は、チョコレート色の肌も、強い光を放つ瞳も、昔とは変わらないのに、大人への階段を昇りだしているのが判るほど、もう青年の顔をしている。
 だからこそ目を見ることが出来なくて、そらしたままになってしまう。

「・・・上がれよ」

 硬い表情で、命令口調の強い言葉。
 昔はもっと優しくて、こんな涼ははじめて見る。

「明が1人って言うから心配で来ただけだし、涼がいるならいいの。帰る・・・」
「せっかく来たんだし、薬を飲ませるのに、ちょうど明を起そうと思っていたんだだから・・・」
「美弥!!」

 言葉の途中で、明の呼ぶ声が聞こえた。
 声の聞こえた方へ顔を上げれば、グレーのパジャマを着ている明が階段を下りてくる。

「明・・・」

 顔を見てすごく安心してしまう。
 明は私と涼の側に来ると、私の腕を掴んでいる涼の手を外す。

「美弥に触れんなっ!」

 いつもの柔らかな明ではなく、独占欲と、嫉妬を浮かべた明は、怖いぐらい真っ直ぐに涼を見つめながら私を涼から隠そうとする。
 激しいまでの想いが伝わってきた・・・・・・。

「・・・ありがとう兄貴。でも、美弥は僕の彼女だから」

 さっきの激しさと打って変わって、明は冷静に涼と話したけれど、その内容は、しっかりと立場を明言していた。
 その言葉に顔が赤くなって落ち着かなくなる。

「・・・わかった。お茶を入れてお前の部屋に持っていくよ」
「ありがとう。じゃあ美弥、僕の部屋へ行こう」

 明は私の手を取って、手を繋いだまま2階へと上がる。
 私はそんな明に戸惑いながらも、明と一緒に階段を上がった。
 背中に涼の視線を感じながら・・・・・・。

 2階に上がると、突き当りの奥の部屋のドアを明があける。
 そこが明の部屋なのだろう。

「僕の部屋に入るのは、初めてだね」
「うん・・・」

 振り向いた明は、いつもの明に戻っていて、にっこりと私に微笑みかける。
 さっきの出来事を引きずっていた私は、まだ戸惑っていたけれど、何とか明に合わせようとしてみた。

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