銀色メモリー
 考えたこともなかった言葉が明から発せられ、理解出来ずに時間が流れる。

「え? だって・・・朝、そんなこと言わなかったじゃない・・・」
「うん。でも、もうずっと前から考えてた。・・・美弥といると、僕は僕でなくなるんだ。そんな自分が嫌だから、別れる」
「明・・・」

 私と一緒にいると、自分らしくいられないと言われ、胸が詰まる。

 ずっと前から考えていたって・・・・・・。
 じゃあ、今まで無理をして付き合っていたの?
 だから、哀しそうな、辛そうな顔をしてたの?

 息が出来ないほど、胸が激しく痛んで、私は無意識に自分の胸を抑える。

「ごめん・・・」

 明に謝られ、私は明の部屋にいたくなくて、ここから飛び出すことしか考えられなかった。
 涼の時とは違う、哀しいばかりの痛み。

 私・・・・・・。
 やっと自分の気持ちに気付いたのに、失恋しちゃったのかな?

 明らかの、突然の冷たく哀しい拒絶。
 涙で視界が歪んでいく・・・・・・。
 胸からの痛みしか感じられない私は、考えることなく思うがまま、明の家から走って飛び出してきた。

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