銀色メモリー
 涼に向かって笑顔でうなづけた私に、涼も笑った。

 もう、2人とも、想い出には縛られてはいない。

「じゃあ、家へ戻ろう。そして部屋の前で好きなだけ告白してくれ。俺はしばらく散歩にでも行っているよ」
「・・・ありがとう、涼。私ね、中学の時、涼が好きだったよ。明を好きになるまでずっと!」
「ああ、俺も愛田のことが好きだったよ」
「うん」
「じゃあな」

 清々しい気持ちで涼と2人、笑いあう。

 今までいえなくて、自分の胸の中にしまっていたからこそ、残ってしまっていた想いを涼に伝えた。
 新しい恋を自分の心に残す為に・・・・。

 私は、背中を向けて歩いていく涼に、深く頭を下げると、自分の気持ちを伝えるために、明のもとへと戻った。





 明の部屋の前に立つと、大きく息を吸って、ドアを叩く。

「明、私、明のことが一番好きだよ! 明が一緒にいてくれたから、私は涼とのことも想い出に出来た。明に側にいて欲しいの。これから幸せな恋をしたいから!」

 私がそうドアの前で怒鳴ると、しばらくしてドアが開いて、泣きそうな明が立っていた。

「私、明が好きなの。涼のことを忘れちゃうぐらい、明のこと好きだよ!」

 精一杯の気持ちを込めて、明へ告白する。

 あの時も、自分でちゃんと告白すれば良かったのだ。
 でも、今はそれで良かったのかもしれないと思っている。

「・・・本当?」

 私の顔を見て、それが真実かどうかみきわけている真っ直ぐな明の視線を、私も真っ直ぐに受け止める。

「明が信じてくれるまで、何度でも言えるよ。明が大好きだよ。明が・・・」
「美弥!」

 笑いながら繰り返そうとした瞬間、少し熱っぽい明の腕の中に抱きしめられる。

 熱があるから、少し熱いけど、温かくて、とても安心できる場所。
 明の腕の中は、かすかに森林の香りがする。

「明が好きだよ」
「僕も、美弥が好きだ・・・」

 優しい告白に、私は目を閉じる。

 今度は明と、キラキラと光輝く思い出を綴っていく。
 幸せな気持ちで・・・・・・。



            - END -
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