銀色メモリー
運命のセレモニー。
 しかし、涼にすごく似ているけど、目の前に立っている人物は涼ではない。
 
 涼に比べて、少し幼さを残す容姿。
 そして決定的に違うと言ったら緩やかに波打つ黒い髪。
 涼はサラサラのストレートだもの・・・・・・。

 相手の男の子が、涼に良く似た瞳を細めてにこりと笑う。

「弟です。僕の名前は下沢 明・・・」

 笑うと全然似ていない顔で、彼はそう名乗ったのだった・・・・・・。

 待って!
 彼がパスケースを拾ったと言う事は、写真を見たっていうことよね?
 つまり、兄弟である涼も写真を見たかもしれない。

 そこまで考えついて、血の気が引いていく。

 青くなっていく私を見て何を考えたのか判ったのか、彼は私の自転車のかごに手をかけてもう1歩近づいてきた。

「兄貴にこのことは言ってないですよ」

 その言葉で、安心はしたけれど、何だか嫌な予感がする。
 何故か微笑んでいる彼から離れたかったけど、彼に自転車を掴まれていたし、私はその自転車にまたがったままでは下がりようがない。

 人の予感とは時に的中するもので、彼は次の瞬間、とんでもない事を言い出した。

「あなたが兄貴と何があったか、僕も少しは知っているんです。それなのに、あのパスケースの写真はどうでしょうね?」
「な、なに?」
「このことは兄貴に秘密にして欲しいんでしょ?」

 彼の微笑が、すべてを知っていそうな笑みに変わる。

「大丈夫、バラしたりしませんよ。・・・あなたの態度次第ではね」
「・・・な、何言ってんの?」
「条件があるんです」
「じょ、条件!?」
「そっ、こんなに美味しい秘密があるのに、タダで返すわけないでしょ」

 彼の言い分に、今度は頭に血が昇っていく。

 もしかして、これって脅迫されてるの?

「脅迫するつもり?」
「脅迫? そんな大げさな」

 ズバリと聞く私の言葉に、彼は大げさに驚いたような表情を浮かべる。

 大げさ?
 黙秘を条件に何かを請求するのは立派な脅迫じゃないの。

 彼を睨む私に、次の瞬間、信じられない事を言ってきた。

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