銀色メモリー
「付き合う人がいないから、丁度いいから、そんな理由で簡単に付き合えない」
「じゃあ、好きだって言えば付き合ってくれるの? 違うでしょ?」
「え?」

 意外な彼の言葉に、私は横に座っている彼の顔を見てしまう。

「誰に好きだって言われても、美弥は断っていた」
「どうしてそれを・・・」

 何故彼がそんなことを知っているのだろう。

 告白された数なんて片手で足りるぐらいだけど、確かにみんな断ってきた。
 私の中にはまだ涼がいるのに、受け入れるなんて不実な感じがしたから・・・・・・。

「僕は美弥のことなら何でも知ってる」
「どうして?」
「ここまで言って本当にわからないの? 美弥が好きだって言っても付き合ってくれないことが判っているから、こうゆう方法を取るしかなかったんじゃないか」
「・・・・・・」

 それって、もしかして私のことが好きだって言ってるの?

 そう聞いてみれば、一言『激ニブ過ぎ』と返されてしまった。

「去年、友達と聖高の文化祭に行ったんだ。そん時に美弥を見た。・・・一目ぼれだった」
「私に・・・一目ぼれ?」
「うん、それから高校の帰りに何度か美弥を見かけたことがあったけど、いつも友達に囲まれててとても話し掛けられる状況じゃなかった。そうしたら昨日偶然友達が美弥のパスケースを拾って、僕にパスケースに兄貴の写真が入っているって見せてくれたんだ・・・」

 そこまで話すと彼は少し淋しそうな表情を浮かべて、私から顔をそむける。

「自分の兄貴が恋敵なんて世の中よく出来てるよ。僕はずっと美弥しか見てなかったのに、その間、美弥はずっと兄貴を見てた・・・」

 彼の言葉がズキリと心に刺さった。
 私にも経験のある気持。

 自分が見ている人が別の人を見ている。
 
 私だって苦しかった。
 涼の気持が別の人に向いていると知って、やるせなくて苦しくって・・・・・・。
 この気持をずっと胸の奥に押しやっても、思い切る事なんて出来なかった。

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