銀色メモリー
さざ波のシンフォニー。
「大変よ、美弥ちゃん!」

 朝食を食べている私のところへ、ママが大騒ぎしながら飛んでくる。

「なあに? ママ、朝っぱらから騒がしいよ」
「だって! 美弥ちゃんってばいつのまにボーイフレンドなんて作ってたの? そうゆうことは一番にママに教えてくれなきゃ!」
「はぁ?」

 何故、朝っぱらからママがこんな事を言い出したのかわからない。

 どうしてママがボーイフレンドなんて言っているんだろうか?
 私にボーイフレンドなんて・・・。

 そこまで考えて、ふと明のことが浮ぶ。

 ・・・明だったらボーイフレンドと言ってもおかしくないよね?
 でも、どうして昨夜の明の存在をママが知るわけ?

 ふと明の『また明日』という言葉を思い出す。

 明日って今日よね?
 今日の・・・いつ?

 そう考えて、やっとあることに辿り着く。

 まさか・・・明が迎えに来てる・・・とか?

「あっ! いけな~い。ママ、彼を玄関に待たせたままだわっ! 入れてあげないと」

 そう言い残すと、ママは玄関へと飛んで行く。

 これだけはっきり聞けば、明が迎えに来たという事がわかる。
 私は、食べかけの朝食を胃の中に収めるべく、口を素早く動かす。

 そのすぐ後に学生服姿の明が居間に入ってきた。

「おはよう、美弥」

 ママの存在に戸惑いつつも明が笑顔で挨拶をする。

「おはよう」
「ごめん、まだ食べてたんだ。ちょっと早すぎたみたいだね」
「美弥ちゃん、美弥ちゃん! ママに紹介してくれないの~?」

 ちょっと話す間もなくママが割りこんでくる。

 甘えん坊で寂しがりやのママは、娘とオトモダチ関係を地でいける人だ。

 可愛いと言えば可愛いかもしれない。
 まだまだ若く見えるし、可愛い服も似合う。
 煩わしいように見えるけど、これはママのポーズ。

 こんなふうに子供っぽい態度をしているけど、ちゃんとママは私の必要な時に『お母さん』になれる人。
 だから、私もママが好き。

「はいはい、こっちうちのママ。この子下沢 明君」
「「それだけ?」」

 見事に2人とも、不満げな表情でハモる。
 そんな不満げな2人を無視して、私は椅子の横に置いておいたカバンを持って、立ち上がる。

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