だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「自分で見つけたかったのっ」

「誰を?」

清水ってこんなに怖い声出す人だったっけ……?

疑問に似た形の不安が胸を過ぎる。
が、自由にならない身体でそんなこと思い悩んでもどうなるものでもない。

「誰って。
昨日出会った子供たち」

「それで、見つけた後はどうするつもりだったんですか?」

「どうって」

……どうって。
言われても。

わたしは口篭る。

強いて言えば、今日も元気で過ごしているか見届けたかっただけで。
深いプランがあったわけじゃない。

元気な姿が見れればいいかなって思っただけで。

「あの子達、何かから逃げて隠れているみたいだったから。
出来るだけそっとしてあげたくて」

ヤクザなんて引き連れていったら、おおごとになるに決まってるもの。

「誰なんですか?」

清水はそれを聞き出すまで手を放してくれないつもりかしら。
決して高圧的ではないのだけれど、静かに繰り返される<誰>という言葉が、段々怖い言葉にさえ聞こえてくる。

「名前なんて知らないわよ。
言葉が通じなかったんだから。
アジア系の女の子と、中国系の男の子。
すごく虐待されているみたいで……。
公園でパンくず拾って食べてたから、気の毒になって。
それで、マック奢ってあげて。それだけよ。
名前なんて知らないんだからっ」
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