だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
コンコン

ノックの音が聞こえて、心臓がどきりと跳ねた。
だって、パパが戻ってくるのならわざわざノックなんてするはずないもの。

「どうぞ」

「失礼します」

期待を裏切らない、静かな清水の声に何故か心臓が騒ぎ出す。
おかしいわ。
今朝までこんなことなかったのに。

うわ!反則。

黒いパジャマにガウンを羽織り、いつもきちんとセットしている黒髪すら下に垂れていてその雰囲気の違いまでもがわたしをドキドキさせた。

「……起こしちゃった?」

手持ち無沙汰に、傍に居る熊のぬいぐるみの腕を掴んで、わたしは聞く。
そもそも、今、何時なのかしら?

清水は、手際よくベッドサイドに葛湯などを置きながらそっと唇に笑みを浮かべた。

「いいえ。
目が覚めて偶然紫馬さんに出会っただけです。
心配しないでくださいね」

そんな偶然なんて、あると思う?
清水は自然にパパが座っていた椅子に座る。
つまりは、パパと同じ距離に居るはずなのに、なぜか近くに感じて頬が赤らむ。



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