だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
本当。
どうして、パパの笑顔には微塵もときめかないのかしら?

清水なんて、取り立てて、少なくともパパほど気障っぽい笑顔なんて浮かべてくれてなかったのに。

……不思議だわ。
  こういうのを、理科の時間にでも実験してくれればいいのにな。

「そうそう。
薬は清水に預けておくから。
大雅くん、ちょっと予定があるから任せられないんだ」

「い、いいわよ別に」

むしろ、そのほうが嬉しいくらい。
わたしは声が上擦らないように最新の注意を払って応える。

「でも、飲まないからって口移しに飲ませてあげて、なんて言わないけど。
それでもちゃんと飲めるかな、薬?」

この、バカオヤジっ!
いつの話してるのよ?

そりゃ、数年前、確かに苦い粉薬が飲めなくて、水を入れてあるマグカップに全部溶かしてみたけど溶かしきれなくて。
それに気づいたパパが半ば本気で口移しで人に薬を飲ませようとしたってのは事実だけどさ。

「だぁいじょうぶよ!
っていうか、そんなの清水に言わなくていいから。
オブラートがあったら飲めるもんっ」

「そう?
清水、笑ってくれると思うんだけどな」

笑わせなくてもいいですから。

なんだかんだいって、確かにパパはわたしが寝付くまで傍に居てくれたけど、清水が傍に居てくれたときのようなときめくような嬉しさなんて、残念ながら一ミリも感じなかった。

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