だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
ふわりとわたしをベッドに置いた清水は、そのまま無言でわたしのベッドサイドに座る。

どうしよう。
怒ってる……よね?

耳が痛いほど静かな時間が続き、わたしは唇に手を当てる。

「ねぇ、倒れるなんて思ってなくて。
あの」

しい、と唇に人差し指をあてるジェスチャーでわたしを黙らせる。

「もうしばらく眠っていてくれないと、心配で朝食も取りにいけないでしょう?
都さん、私のことがお嫌いですか?」

いつもの無表情に、いつもの冷静な口調で清水が問う。

……ズキン。

拳銃や刃物なんて使わなくても、人の心って簡単に貫けるのね。

「嫌いな分けないじゃないっ。
むしろ、」

好き、なんて簡単に口に出せないくらい、わたしの心臓は高鳴っているっていうのに。

なんていったらいいか分からなくて、唇を閉じる。

それをただの言い訳と感じたのか。
感情の読めない瞳でわたしを見ている。

でも、簡単に好きなんていえないほどに気になっていて。
何故かしら?
自分の胸の中に溢れる感情にどう蓋をしたら良いのか分からない。

これがお兄ちゃんだったら、わたしがこうやって感情を持て余す前に簡単にキスして忘れさせてくれるのに。

清水のパーソナルスペースは一般的な日本人と同じようで、不必要にわたしに近づいてきたりはしないから。
視線を絡ませる以外に、近づく方法が分からない。

< 139 / 253 >

この作品をシェア

pagetop