だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
『まあ、一日、二日放っておいてもどうってことありませんよ。
いくら彼がロリコンで、彼女の気持ちに気づいたとしても、風邪を引いて弱っているところを襲ったりはしないでしょう。
気にせず、ご自分のお仕事に集中してください』

人を動揺させた張本人のくせに、そんな覚えは微塵も無いような涼しい笑顔を浮かべ、芝居じみた礼をすると、ふらりと出て行った。

こんな深夜に一体どこへ――。

しかし、紫馬さんはそんな質問も認めないような飄々とした足取りで俺の前から姿を消した。

自由を擬人化したら、多分紫馬さんにしかならない。
そう思って俺はため息をついた。

ダイニングに行って一杯もらおうか――。
そうも思うが、今、清水に会っても何をどういえばいいのか分からない。

いくら俺が鈍くたって、紫馬さんが指している人物が誰であるかくらい分かるものだ。

ほとんど無意識に、取り出した煙草に火をつけている。
都さんがここで眠っていた頃は、この部屋は禁煙にしていたのに。

一刻も早く、彼女を抱きしめたい。


頭の中を占めているのは、もはやそのことだけだった。

< 148 / 253 >

この作品をシェア

pagetop