だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
手に馴染むずしりとした重さが、俺をこの世界に引き戻す。

清水のケータイが鳴る。
電話を切って彼が言う。

「小川の居場所が判明しました」

さっきの電話を逆タンしたのか。
それとも、元々発信機の一つくらい小川につけていたのかもしれない。

告げられた場所は、都さんがケータイを忘れたハンバーガー店に程近い路地裏だった。

清水、赤城以外にこのリムジンに乗っているのは三名。

二十代なのに、パッションピンクの髪がやたらと印象的な特攻隊の白井。
三十歳にして既にムショ帰りの身である、赤坂。
そして、俺と同い年で背格好もそっくりなので、何かというときは俺の身代わりになってくれる、黄崎。
もちろん、今も俺と同じ白いスーツを着ていた。

「黄崎はここで待っていてくれ。
赤坂は赤城と一緒に、路地の右から入って。
俺と白井で左から行こう。
清水は念のため、路地の左側の表で張って置いて」

細かいことまで言わなくても分かり合えている連中なので、あえて短い指示しか出さなかった。

俺と白井は早めに降りた。
路地の右側に、車も止めておくことにする。

多少目立つが、いまさら隠れるのも意味がない気がした。
夜というのにサングラスをかけるのは、雰囲気ががらりと変わるせいだ。

万が一にも素の俺の知り合いに出くわして身元がばれるのは避けたかった。
ほら、今夜ここを歩いていたばかりにそいつが口封じされるのも気の毒だろう?

道行く人のぎょっとした眼差しにも慣れたものだ。
気にすることもなく、肩で風を切りながら目的地へと向かっていく。
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