だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「誰にチョコレートをあげるんだって?」

背中からのんびりした声が響いてきてびっくりして振り向いた。

「パパ?」

な、なんでここに居るのよ。
パパはピンクのスーツでバシっと決めている。

不思議よね。
ピンクのスーツでバシッと決めることが出来るって言うのも。

まぁでも実際に決まってるんだから仕方が無いか。

パパはわたしと目が合うと「ただいま、都ちゃん」と。これまた外国映画並みにオーバーに手を広げてわたしを抱き寄せる。

これよ、これ。
パパがずっとこんな風に遠慮なくキスするのを見て育ったから、お兄ちゃんが真似るんだわ。


ほんっと、なんとかしなきゃ。

でも、その前に。

「えっと、だからわたしの好きな人にあげるに決まってるじゃないっ」

わたしの言葉にパパは、こんなに楽しいことはないってくらいの笑みを浮かべる。

「へぇ。
ついこの前、清水にどうやって人を好きになるか教えてもらっていた都ちゃんが?」

……嫌なこと引っ張り出してくるわね、パパ。

でもわたしメゲナイわ。
初恋を守り抜くには多少の嘘は必要なのよ。

うん、きっとこれこそが大人の階段昇っている証拠。
でしょ?
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