だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「別に」

って、私が言う前に

「お帰りなさい、紫馬の頭」

と、清水の穏やかな声。

「ただいま、清水。
お姫様がご機嫌斜めなんだけど、何があったの?
もしかして、俺からの誕生日&クリスマスプレゼント、届いてない?」

「……と、届いたわよっ」

わたしは思わず顔を赤らめる。

大きすぎる熊のぬいぐるみと、サイズがぴったりのブラジャー&パンティのセットという、アンバランスな組み合わせのプレゼントが!

「どうだった?」

と悪気も無くにこにこと聞いてくるのは、まさか熊のぬいぐるみのことじゃないと思うから、わたしは視線を逸らして

「驚くべきぴったりサイズでした」
と、報告だけしてから小さな声で
「ありがとう、パパ」
と、続けた。

確かに、発育の早い子なんて去年とかからブラジャーをつけていて、私もつけだすタイミングを迷ってはいたけれど。

彼のその胸を見る目が、父親としてのものなのか、男性としてのものなのか。

……あ、あまり考えたくない。

「それは良かった」

パパは照れることもなくにこりと笑って、(っていうか、パパが照れることってあるのかしら?見たことない気がする)私の頭をくしゃりと撫でる。

「その誕生日にちょっとした揉め事があったらしいですよ」

涼しい顔で、何を言い出すのよ、清水!!

「し、清水?
パパは総長とお話があるの。
ね?お忙しいのよっ」

わたしは慌てて彼のグレイのスーツの裾を引っ張る。

そういえば、パパは、紅白歌合戦の司会者かと見間違えるような銀色をベースにした煌びやかなスーツを、平然と着こなしている。
パパのファッションセンスには、本当、脱帽するほかない。

というより、そのセンスを受け継がなかったことにだけは喜ぶべきなのかも、しれないわ。

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