だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
だから、わたしはにこりともしないで嘘をつくの。

「そうよ。
清水のお陰で分かったの。
わたしが誰を好きかってことが」

「そういうもんじゃなと思うけど」

「パパは黙っててっ……。だいたい、何か用事があって帰ってきたんじゃないの?」

さっきからの話を総合すると、パパがここに居るのはお兄ちゃんの<命には別条の無い>友達の処置をするために違いない。
いくらわたしでもそのくらいは分かるんだからっ。

「おやおや。
都ちゃんとお喋りする以上に大事なことなんて、パパには一つも無いよ」

真面目な顔で大げさに肩を竦めて見せるのも、冗談の一環なのかしら?

「分かったわ、パパ。
じゃあ、後でもっとたくさんお喋りするためにお仕事してきていただける?」

「我が娘ながら厳しい子に育ったなぁ」

やれやれ、と。
冗談とも思えぬ仕草でため息をつくパパ。

「わたし、片付けておくからお友達のところに連れて行ってあげれば?」

お兄ちゃんに向かってそう言った。
とにもかくにも、さっきの話題から逃げ出したかったのだ。

「片付けなんてしなくていいですよ。
お皿が割れて怪我でもしたら大変ですよ?」

お兄ちゃんが真顔で言う。
バカにされていると怒るところなのか、過保護にされていると喜ぶところなのか。
ちっとも判別がつかないじゃない。
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