だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
……うっ。

わたしは思わず喉につかえたケーキを、氷がだいぶ解けてしまったミネラルウォーターで胃袋に流し込まなきゃいけなくなった。
パパはそんなわたしの様子をちらりと見て、さして興味も無いかのようにごくりとビールを流す。

「ふ、ふぅん、そうなんだ」

「そうだよ」

パパとわたしの視線が絡んだこの中間点、今、絶対に火花が散ってるわよね?

「清水はなんて?」

残ったケーキに意識を戻し、パパの真似をして気の無いふりで聞き返す。

にやり、と。
パパの紅い唇が意地悪く笑ったのが目の端にちらっと映ったので、わたしはケーキを細かく切りながら、口に放り込むのを待つことにした。

パパもわざとのようにゆっくりとビールを口許に運んでいる。

そのタイミングで、小さく切ったケーキをすかさず口に放り込む。

こうなったら、持久戦よ。
とことんやってやろうじゃない!

「さぁ、清水に直接聞いてみれば?」

「ええ、じゃあそうするわ」

何よ。
一体わたしから何を聞きだそうとしてるってわけ?

探りあいに発展したディナーは、見た目だけは優雅にお開きになった。

玄関に出たら、黒塗りの車が迎えに来ていた。

……どうして?
  どうして清水が運転してるの?

わたしはきっとパパを睨む。
あ、しまった!

ここで感情を表したわたしの……負け?
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