だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
向組と言えば、元はうちと関東を二分する勢力だった組だ。

その歴史も古い。

だから、古い言い伝えによれば、明治時代、平民苗字許可令が出たときにそれを活用して、仲間の苗字を統一させたという。

銀組は、「赤青白黒」等の色に纏わる字を入れて。
向組は、「東西南北」の方向に纏わる字を入れて。

もちろん、色に纏わる苗字を持つものが全てうちの関係者というわけではないし、向組にしても然りだ。

――ただ、目安にはなる。

特に向組 青龍会となれば、必然的に苗字には<東>の文字が入っているものがほとんどを占めているはずだ。

もっとも。

向組はうちほど世襲制度が厳しくないという話もある。
このご時勢、それほど縛りをキツくしていると仲間を増やすことも難しいからだろう。

ただ、縛りを緩くすればそれだけ綻びやすい。


結束度合いだけで言えば、既に、うちの圧勝だ。


「ケータイは抜かれましたね」

清水が厳しい口調で言う。

「別れるか?」

二手に別れてそれぞれを探ったほうがいいのでは、とも思う。

「いいえ。ネックレスの発信機には気づいていません。
このまま追跡します」

清水は赤城に素早く指示を出していた。



今、清水にあって俺に無いものはと問われたら――
迷うことなく、冷静さだと答えることが出来る。
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