だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
それから立ち上がって俺を見た。

「もう、お姫様を連れて帰ってもらっても結構ですよ。
後は俺が片付けておきましょう」

「……まさか、子供の臓器までうっぱらう気じゃないでしょうね?」

紫馬さんの片付けるという言葉には、つい過敏に反応してしまう。
紫馬さんは大仰に肩を竦める。

「臓器の密売人のように仰るのはいかがなものかと思いますよ?
子供だったら、生きているだけでも存分に利用価値なんてあるじゃないですか」

女性なら誰でも心を許してしまうような、口許に漂う甘い笑みこそが危険のサイン。

「折角なんで付き合います。
だいたい、東野はどうなったんですか?」

「一応、家にご招待しています。
都さんの担任ですからねぇ、丁重に扱わないと」

「家というのは?」

銀組本部のことだろうか?
紫馬さんは剣呑な瞳で真っ直ぐに俺を見た。

「紫龍会本部です。
まだそのままにしてあるんですよ?
言ってませんでしたっけ」

解散してあれはもうない、としか聞いてない。

刹那、紫馬さんの表情から、冗談と優しさが一気に消えた。
氷を思わせる冷酷な瞳が、後に残る。

「仲間の血が染み付いているあの部屋で、狂ってしまえばいい」

氷点下の声でぼそりと言い捨てた紫馬さんの身体からは、やりきれない後悔が狂気を帯びた色に染まって滲み出ていた。




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