だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
26.夢、じゃなきゃ何かの罠?
◇都side◇

ゆっくりと瞳を開くと、そこはいつものベッドでわたしはびっくりして飛び起きた。

「気づかれましたか?」

ベッドサイドから優しい声。
目をやると、そこにお兄ちゃんが座っていた。
眺めていたケータイ電話を閉じて、躊躇わずにわたしを抱き寄せてくれる。

カシミアの肌触りが心地良かった。
お兄ちゃんが着ている黒いセーターの肌触り。

「今……何時?」

「もうすぐ、夜の8時になるところです。
お腹、空いたんじゃないですか?」

言われてみて、確かにそうだったのでこくりと頷いた。

確か、今日は東野先生に脅されて谷田陸と一緒に車に乗って、コンビニで薬を嗅がされて気を失って……。
港の倉庫にお兄ちゃんとパパと清水が助けに来てくれたんだっけ?

倉庫の記憶が、何故かとても不鮮明。

お兄ちゃんはぼうとしているわたしの額に、唇を落とす。

「疲れているんですね。こちらに食事を運ばせましょうか?」

「お兄ちゃんは、食べたの?」

「いいえ」

優しさ100%の笑顔でお兄ちゃんが微笑む。

「都さんが目覚めてくれないと、私の食欲も沸いてきません」

どきりとするようなことを平然と言うので、心臓が高鳴る。
その隙を狙ったかのように、わたしの唇にそっとキスが降ってきた。




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