だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「紫馬の頭、こんなところにいらっしゃったんですね」

突っ伏しているわたしの耳に、清水の声が入ってきた。

「そうだよ。
ああ、丁度良かった。うちのお姫様がヒス起こしちゃって。
都ちゃん、清水に教えてもらったら?」

だって、清水にあげたいのに教えてもらったら意味なくない?

そこまで考えてはっとする。
そっか、谷田陸にあげるんだったっけ。

わたしのチョコレート。

ふわり、と。
大きな手のひらがそっとわたしの頭を撫でた。

どうしてかしら。
見ても無いのにわたしには、この手のひらが清水のものだって言うのが分かる。

少し前まではこんなに簡単に人の頭に触れたりはしなかったのに。
そうして

「都さん、やってみますか?」

と、柔らかい声がまるで天使の羽みたいにそっと降りてきた。
テーブルに突っ伏したまま、こくりと頷く。

「じゃあ、着替えてくるので待っていてくださいね」

わたしの返事も聞かず清水がゆっくり遠ざかる足音が聞こえてくる。

「清水って、あんなに柔らかく喋れるんですね」

お兄ちゃんが驚いてパパに聞いている。

「俺も知らなかったよ。学校に行って丸くなっちゃったんじゃない?」

笑い声を含んだパパの言葉が、真実かどうかなんて確かめようも無い。
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