だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「都さん、大丈夫ですか?」

背中に当たる手は、お兄ちゃんのものだ。
わたしはようやく重たい頭を上げる。

これじゃ、本当にヒスを起こしている子供だわ。
わたしの傍にしゃがんで視線を合わせてくれる心配そうなお兄ちゃんの瞳に向かってにこりと笑ってみせる。

「うん、大丈夫」

あれ?お兄ちゃん、いつのまにスーツに着替えたのかしら。
訝しげな視線に気づいたのか、なんでもない顔で言い添える。

「会議があって。
でも、都さんのことが心配だから、私はここに居ますよ」

いやいやいやいや。
是非とも、会議に出てくださいっ。

っていうか、あれ?
清水はそれでパパのことも探しに来たのかしら。

「大丈夫だから、会議に出て?」

パパは僅か離れたところで苺を齧っていた。
目が合うと、溶けそうな笑顔を浮かべる。

「会議より、姫の方が重要」

……もしかして。
  わたしって、大事な会議に出なきゃいけない二人のメインパーソンを引き止めている、すっごくワガママな子供じゃない?

「もお大丈夫だから。
ほらほら、二人とも会議に出るっ」


立ち上がって、二人の背中を押して外に追い出した。
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