だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「好きだって言ってるじゃないですか?
どうして分かってくれないんですか。
添い寝出来ないのは、夜の仕事が増えてくるからですよ。
居る夜と居ない夜があったら、そのほうが余計に不安でしょう?」

都さんは一瞬、物言いたげな色の瞳で俺を見たがどう解釈してくれたのか、ようやくこくりと頷いた。

「清水も、わたしのこと好きだって言ってくれるわ」

予想外のカウンターパンチに目が点になる。
でも、瞳を伏せている都さんの瞳に、俺の表情など見えていないだろう。

「でも。
わたしの気持ちは、その好きじゃないのっ。
ねぇ、どうしたらちゃんと伝わる?
バレンタインにチョコレートあげたら、伝わると思う?」

そんな切ない声を出されたら、こっちの胸が痛みますよ、都さん。

俺はそっと小さな身体を抱き寄せた。

「ちゃんと、伝わっていると思いますよ。
でも、年齢が違いすぎて受け止められないだけかもしれない。
ねぇ、何をそんなに焦っているんですか?
クラスメイトのことがお好きだと言うなら、もうすぐ卒業式ですから焦る気持ちは分かります。
だけど、清水は今すぐ出て行くなんてことしませんよ。
心配しなくて大丈夫です。
来年も、再来年もバレンタインデーが来るたびにチョコレートを渡し続ければいいじゃないですか」

本当に、そんなに長いスパンで都さんが清水のことを好きでいるとしたら、俺が耐えられないんだけど。

その気持ちを飲み込んで、偽善者の言葉を綴る。
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