だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
そして、意地悪なことを承知でその瞳を覗きこんだ。

「もし、そんなに長い間好きでいられるかどうか自信がないと仰るのであれば、都さんの好き、もその程度だってことですよ」

彼女は心の中に巻き起こる嵐にも似た衝撃に耐えるようにぎゅっと瞳を閉じた。

俺だって、ほんの刹那、心の中に燃え上がるような想いが巻き起こることを知らないわけじゃない。
特に、時間の流れが遅い子供の心になら尚のこと、だ。

砕きたいわけでも、消したいわけでもないのだけれど。
広い心で容認してあげることが出来なかったのは、俺自身が自分の気持ちを持て余しているからに他ならない。

次に、都さんが瞼を開けた時。
その瞳は、凪いだ海のように穏やかになっていた。

そして。
子供に似つかわしくない、大人びた笑みを浮かべて見せる。

そぉっと、俺の耳に唇を寄せる。

「一番はお兄ちゃんで揺るがないの。
でも、ほら。
いろいろと難しいじゃない?だから、ね、二番目を探したの」

いつもと違う、大人びた口調で、遊びなれた女子高生のような台詞を吐く。
似つかわしくない、とは思わなかった。

放っておけば、数年後にはきっと、平気な顔してそんな台詞を吐けるような遊び人に育ってしまうのは目に見えている。

美人だし、それに。
あの紫馬さんの娘だ。

今だって本人の自覚がないだけで、学校の中でモテているのだと清水も言っていた。
だからこそ、女の子たちからのやっかみを買う。
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