だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「それで、清水なんですか?」

頭を撫でながら問う。

都さんは俺の腕から抜け出し、その唇にいたずらっ子の笑みを浮かべた。

「……だって、好きなんだもんっ」

不意に正気に戻ったように、子供らしい顔でそれに似合った言葉を吐く。

「前は、相合傘のどっちかだって言ってたじゃないですか?」

俺も釣られて頬を緩ませていた。
真面目に話し合うような問題じゃない、これは。

人生で初めて見つけた恋愛ゲームのようなものなのだ。
真剣に結婚相手を探すわけでも、ましてや、泥沼の様相に呈するような重たい恋愛を始めるわけでもなく。

ただ、自分の中に見つけた好きという気持ちを使って、どこまで何が出来るのか確かめたいだけの恋愛ゲーム。

本物の恋愛を始める前の、予行練習のようなものだ。
本人はもちろん、真剣そのものなんだろうけれど。

そこまで考えて、やっと。
狭い心のどこかに余裕が生まれる。

< 233 / 253 >

この作品をシェア

pagetop