だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
前回のことを考えると、街を目指す気にはならなくて、真逆の方へと走っていく。
途中で、雨粒が落ちてきたけれど、それももうどうでもいいことだった。

今度は本当に風邪を引けばいいんだわ。
それでもう、あんな小学校、卒業式まで行ってやらないんだから――。

悔しくて、哀しくて。

それでも、泣かないって決めたから。
唇を噛む。

人の居るところには行きたくなくて、大きな木の下で雨宿りすることに決めた。
まだ昼間だというのに、薄暗く、行きかう車はライトをつけていた。

本格的に降る雨に、体温が奪われていく。
わたしは土の上に座り込み、膝を抱えて丸くなった。

「都さんっ」

どのくらいの時間が経ったのかしら。
緊迫した声に呼ばれて目が覚めた。

清水だ。

――どうして、傘も差してないの?

びしょぬれの彼は泥だらけのわたしに手を伸ばし、躊躇うことなく抱きしめてくれた。


「お待たせして、すみません――」

口調は丁寧だけれど、その色はお邸で聞くものよりずっと学校で耳にするのに近かった。

降りしきる雨からも、投げつけられる嫉妬からも守ってくれるかのようにぎゅうと広い胸に抱きしめられる。

「な……んで?」

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