だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
でも、気を失っている場合じゃないの。
わたしはランドセルから箱を取り出す。

中身はそりゃ、知ってるって分かっているけど。
それに、この雨で折角の包装もぐっちゃになるって分かっているけど……

「これ……」

わたしは雨飛沫を気にせずに顔をあげた。
既にいつもどおり眼鏡をかけている彼が、どんな顔で受け取ってくれるのかとても気になったから。

「ありがとう」

その表情と、その声は。
お邸で見るものでも、教室で見るものでもなかった。

作り物じゃない、本物の笑顔。

ああ、笑顔って。
本物は零れるんだ。

ポーカーフェイスの清水でも、ちゃんと。
その綺麗な顔から笑顔の雫は零れ落ちて、私の心をあったかくしてくれるんだ。


正直、来年も再来年もずっと清水のこと好きで居られるかどうかなんて自信はなかったけれど。
今、ここで。
笑顔が見れただけでも、好きになった価値はあるのだと。

何故か納得してしまった。

誰に教えてもらったわけでもないのに。

初恋なんだから、これで十分よね。
キス代わりの頬ずりと、奇跡のような笑顔。


これ以上望んだら、バチが当たっちゃう。
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