だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「次期総長の仰ることは分かります。
紫馬さんも同意見でしょう。
でも、そうやって逃げてばかりで本当に良いとお思いですか?
都さんはそんなにやわな子じゃないと、わたしは思っているのですが。
もちろん、教師としてのサポートはします。
しばらく、私に任せていただけませんか?」

驚くほど滑らかに、清水がそう言った。

「断る。
わざわざ傷つくために、学校に行くなんて馬鹿げた話は承知できない」

お兄ちゃんはとりつくしまもないほどの、不機嫌な声でそう言った。
清水はわたしに視線を向ける。

「都さんは?
卒業式までもうずっと、こちらのお邸で過ごしたいですか?」

「わたしはっ」

「都さん。
今すぐ結論を出す必要はありません」

慌てて口を開くわたしを、お兄ちゃんは穏やかに制する。

「まだ、結論は出てないのですか?」

清水の声は、穏やかだ。

こくん、と、わたしは頷く。
事実を受け止めるのに精一杯で、今後のことなんて、まだ、考えてもいなかった。

おうちにいたら、楽だろうなっていうのは想像がつく。
まだ、クリスティーナやシンもここに居るから、遊び相手には不自由しない。

でも、学校に行ったら……?

音葉ちゃん、どんな顔しているのかしら。
わたしは、卒業式までずっと睨まれてすごさなければいけないのかしら。

それは、少し、怖い。
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